20歳エジプト紀行5 [バフレイヤ・オアシス、白砂漠 後編]9月6日

 

 

 

 

深い眠りから目が覚めて視界がボヤけたまま最初に見たのは、やたら高くて遠い天井だった。
そして次に見たのは、誰も寝てないシングルベッド2台。
そこからあたりを見渡すと、微かに日が差し込む窓が一つ。外からは、何処からともなく車の走行音とクラクションが聞こえてくる。吹き込む風が乾いていて涼しい。

ん〜どこだここ。

そんな中、唯一ここが夢の中ではないと気づかせてくれたのは、枕元に転がってた見慣れたiPhone5Sの待ち受け画面だった。

うお〜、どんだけ早起きしてんだ?
ああ、そうだ。エジプトに来てたんだった。

 

 

a.m 05:40 起床

 

 

こうしちゃいられない! 今日はアリに頼んだツアーで白砂漠に行くんだ!
いつもならギリギリまで寝てるところだけど、今日ばっかりは掛け布団をふっ飛ばして、猛スピードで荷物をバックパックに突っ込み、颯爽とゲストハウスを飛び出した。
ほとんど誰とも喋ってねえけど、世話になりゃーした!

 

 

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↑ ゲストハウス近くの大きなT字路。

 

集合場所に着くと、そこにはすでに見慣れた銀のセダンにもたれてコーヒーを飲むアリがいた。今日も頭がピッカピカだ。

「おはよう。早いね〜。まだ集合時間になってないのに。」

アリ「俺はいつも20分前行動さ。」

はっは、さすがだ。抜かりない。
ツアーの代金は昨日既に支払っているので、当日バックレられるみたいなことがあっても何ら不思議じゃなかったが、どうやら俺が信じた相手は間違ってなかったようだった。

 

 

a.m 8:30

ゲストハウスから1時間ほどで到着したのは少し薄暗くて埃っぽい高架下の駐車場。
そこを歩いて少し奥に進んだところでアリは立ち止まり、フロントグリルが金色に塗装された白のバンを指差してこう言った。

 

 アリ「これに乗るんだ。」

「あ、そうか。アリとはここでお別れなんだっけ?。」

アリ「そうだ。何かあったら俺のケータイに電話しろよ?バウーディからツアー開始だぞ?そこで良いドライバーが待ってるから。」

「おう!わかった!色々とありがとう。」

アリ「おう。ちなみに、たった今から、明日の夕方ここへ帰って来るまでに会う人たちは皆んな英語がまともに喋れないからな。まあ、あとは幸運を祈るよ。帰ってきたらまた会おうぜ。」

彼はそう言い残して俺と固い握手をガッチリ交わすと、サングラスを外して爽やかにウィンクし、その場を去って行った。

 じゃあな〜アリ〜...

 

 

 

…いや、どこだよここ(笑)

いくら見渡しても外国人は俺だけ。そして案の定、みんな物珍しげにこっちを凝視してくる。なかなか慣れねえな〜これ。
いやてか、ポケットWi-Fi持ってきてないから困ってもアリのケータイに電話なんかかけられるわけないじゃん!

いやー困ったなー。けど、これを逃したら白砂漠いけないしなあ。
まあ細かいことはいいや。とりあえず乗ろう。

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誰も乗ってないバンに乗り込み、とりあえず1番後ろの座席にバックパックを置いて、浅く腰を下ろす。乗ったはいいが、警戒は怠らない。
するとそこに、黒いガラビアで両目以外の全身を覆った女性が、それはそれは天使のような小さい赤ちゃんを抱えて乗車して来た。

(アハ〜〜。なんだこいつ〜〜〜。ちいせぇな〜〜。)

(これならオアシスまでの道のりがどんだけ長くても全然良いや〜〜〜。)

なんて思ったのもつかの間。
直後に白のガラビアを纏った40歳前後くらいの大髭のおじさんたちがそれぞれ大荷物でぞろぞろと乗りこんできて、車内は少し呼吸がしづらいほどのすし詰め状態になり、その小さな天使ちゃんはやがて見えなくなってしまった。くそったれぃ!

 

乗客が揃って出発した、大勢のエジプシャンと一人の日本人を乗せた満員のバンは、ガタガタ揺れながら砂漠をめざして郊外を走る。
さっきアリに言われた通り、今このバスには英語を話せる人はいないのだろう。たとえいたとしても、そもそもこのバスの中には誰かと楽しくおしゃべりするような人は一人も居なそうだ。皆んな仏頂面で、誰一人として口を開く者はいなかった。しかしそれはある意味、このバスが旅行・観光とは一切関係のない完全なローカルなバスであることを証明していた。乗っているのは、個人的に都会からオアシスに帰る人か、用があってオアシスに出る人。団体性のかけらも無いそんなバスに乗っかって、誰にも邪魔されず窓から外を眺められているというだけで、俺は心が十分に満たされて幸せだった。

 

 

 

 

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ギラギラの太陽の下で道路に沿ってずーっと同じマンションが林立する。ちらほら洗濯物が見えるが、基本的には人が住んでいる気配を全く感じない。

 

 

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建物が減ってきた。代わりに砂が増えてきた。
砂漠に近づくにつれて、道沿いの植木にどんどん枯れ木が増えていき、ついには黒焦げになって倒れているものもあった。ここは都市と砂漠のニュートラルゾーンだ。

 

そして、、

 

 

 

 

 

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ウヒョ〜〜。

 

 

車内にいるのに悠久の風の音が聞こえて来るような気がする。そしてどこまでも続く砂漠と、雲ひとつ無い澄み切った空の境界線が蜃気楼で歪む。
そんな感じでボケーっと砂漠を眺めていると、砂だらけの景観に1つ白いビニール袋が現れた。それは貨物用のレールの上で風に乗り楽しく踊るように宙を舞っていた。まるでそいつが生きているように見えるのは、ここではほとんど生命の気配を感じないからだろうか。

カイロ到着時点で、既に遠く離れたところまで来たなぁと思っていたが、2日目にしてそれどころではない、どこかもっと遠くの世界の果てに足を踏み入れているような感覚になっていた。

 

約3時間ほど走った地点で広大な砂漠の真ん中にポツンと佇む建物が現れ、バンはそこで停車した。どうやらここはサービスエリアみたいな場所らしい。
次の出発時間を知らされぬまま降りるのは色々不安だったが、心をくすぐる冒険心を抑えきれず、貴重品だけ持ってバンを降りた。
そしてついに、全方位に砂だけが広がるサハラのど真ん中を自分の両足で踏みつけた。

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正直、この時なにを思っていたか鮮明に思い出せない。
しかし、この瞬間から俺の心は完全にサハラ砂漠に奪われてしまった。
理由はただ一つ。

こんなもの見たことなかったからだ!

 

静寂の中でけたたましく鳴り響くクラクションの合図で再びバンに戻る。

 

そこから頭がぼーっとしたまま、もうどれくらい走ったかわからないが、気がついたらバンは緑の生い茂るいかにもオアシスな様子のちらほら人の気配のする大きな集落のような場所に入っていた。
左右もわからぬままここに至ったので、カイロのように看板も建っていないここが本当にバフレイアなのかはわからなかったが、人気も建物もない通りでバンは停車し、唐突に俺だけ運転手に「降りろ」と指示された。
どこを探してもドライバーは見当たらないが、一度降りろと言われたバスに乗り続けてもしょうがないので、黙って降りることに。俺が降りるやいなや、ドアは勢いよく閉められ、バンは走り出す。

ああまじか…。こんなことあんのかよ…。
どうすんだこれ。スマホも電波ないし。あれ?もしかしてこれ遭難?

とか思いながら、少し泣きそうになりながら走り去るバンを虚ろな目で追っていると、なんとその対向車線から猛スピードでこっちに走って来るトヨタ4WDが現れた。運転席には真っ白な歯をした笑顔のにいちゃん。こっちにクラクションを鳴らして来た。

ああ良かった!!!

 

 

降りて来た彼にアラビア語で挨拶し、握手とハグを交わすと、白砂漠へ向かう前に、まず彼の自宅でランチをふるまってくれるとの旨を拙い英語で説明してくれた。
広大なオアシスを20分ほど駆け抜けて到着した彼の自宅は、オアシスの端っこにあり、中東でよく見かけそうな簡易的で小さなレンガ造の建物だった。
うおー本当に家でランチするのか。嬉しいけど、工程的に昼飯抜きで早く白砂漠に向かいたいんだけどなー。
なんて思いながら、断るわけにもいかず建物の1室に上がらせてもらうと、部屋の奥にポツンと置いてあるテーブルを指差して、
「座って。いま料理持ってくるから。」
と言われ、1人で部屋に残された。
部屋は天井が高くて、家具は机のみ、床には絨毯を敷いただけというこれまた期待を裏切らない内観。

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座ってじっと待っていると、写真右奥のドアから、背筋をピンと張った可愛らしい女の子と、その子の後ろに恥ずかしそうに隠れながらついてくる男の子がひょっこり現れ、とても丁寧にペットボトル水と料理を次々と運んできてくれた。わお!超美味そうじゃんか!

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写真では伝わりづらいけど、かなりの量だ。それに加え、熱気のこもったバスでの長旅に、一時的に軽くバテ気味であまり食欲が無いときた。食いきれるかな〜。

そんな感じで、独り黙々と飯と奮闘していると、気づいたらさっきご飯を運んで来てくれた子供2人がドアから顔だけ出してモジモジしながらこちらを覗いていた。

あんまりにもそれが愛おしすぎたので、おいで〜と手招きしてみたら、ニコっと笑って恥ずかしそうに向こうの部屋に引っ込んでしまった。

あ〜こりゃどうせまた来るな〜。と思いながらトマトを口に運んで、顔をあげたらもう既にまた同じ位置でこっちを覗いていた。笑

このやりとりを何度か繰り返している内に彼らとの距離はだんだん縮まって、気がついたらスマホのカメラで変な写真を撮って一緒に遊んでいた。

やはり子供の持つパワーはすごい。この旅だけでも彼らの無垢純粋な笑顔に何度救われたことか。

多分もう会うことはないんだろうけど、そんでもって俺のことはすぐ忘れるんだろうけど、2人のこれからがとびきり幸せな未来でありますように。

 

 

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一瞬だけ行き先が白砂漠であることを忘れていた。
しかし、ここからノンストップで怒涛の冒険が始まることなど、この時に予想できたはずがない。

 

 

 

   

(続く)

『小話① 口喧嘩』


このブログの記事は1投稿、約3500〜5000字くらいあります。
原稿用紙9〜12枚分くらいですね。
そもそも自分は文章を書くのがすごい苦手で、スピードも超遅いので、この量を書くとなるとえらいエネルギーと時間を要します。
なので合間にちょっとした現地の小話とか写真だけの投稿とか挟んでったら、なんかいいかなーと思ってきたんです。

 

 

ちゅうことで今回はエジプトの文化である"口喧嘩"の話。
エジプト人のソレは自分の言い分を通すために言い方に気を遣ったり、論理的な説明で相手をなんとか納得させようという意識はなく、とにかくでっかい声でストレートにバズーカを打ち込むテンション感なので、口論ではなく紛れもない口喧嘩なわけです。
しかもそれが日常茶飯事で、日本だったら明らかに「ありゃりゃ〜。あれはトラブっちゃってんね。」ってくらいの激しいやり取りが街の色んなところで起こっています。

けど、彼らの口喧嘩にはいくつか暗黙のルールが存在していて、その中でも絶対的ルールとして君臨する3つが、
1.どれだけ激昂しても手は出さない。
2.当事者だけで収拾がつかなくなると、第三者のギャラリーが「これはお前がわりぃよ。」とジャッジを下して、その意見が決定権を持っていること。
3.最後には必ず仲直りして終わる。

そもそもエジプト人はとんでもなく素直で人好きで優しくて遠慮しない人たちです。

どれだけ激しく言い合っても、どちらかが負を認めると、互いに頭を冷やしながら最後は笑顔で固い握手とハグを交わします。

それがエジプト流の口喧嘩。

 

例えば、ある日の深夜に、お金を無理やり奪い取ろうとしてきて、道端で散々言い合った相手が、次の日の昼に街ですれ違うと、「Hey!! friend!!」と手を振ってくる、なんてことがありました。

ただ、ナメられがちな我々日本人が小さく出たら、たちまち向こうが得するばかりで、とにかくここは大きく出たもん勝ちなんだなぁと気付いてからは、普段は面倒くさがるところを、血相変えて結構大声で怒鳴ったりできるようになってきます。そして実はこれ、かなり爽快なんです(笑)
そんな環境に身を置いてると、自ずと自分の言いたいことを相手に気兼ねなくぶつけることを覚えて、いつも相手の顔を伺って何も言えなくなってしまう自分はどこかに消えて行きます。

 

しかし、この文化のお陰で一日に何回も何回も喧嘩するハメになったのも事実です(笑)
何かを買うにしろ、乗り物に乗るにしろ、ツアーをお願いするにしろ、交渉が始まったらそれが口喧嘩の口火を切る合図。
その結果、旅の中盤あたりからは、朝起きてまず最初に思うことが「ああ〜。今日も喧嘩三昧だわー。」になって、少し億劫になりながら、くるまってるタオルケットをめくるのでした。。。

20歳エジプト紀行4 [カイロ、ギザ 後編] 9月5日

 

 

 

『ヤッラー』

これは、アラビア語で「行け!」とか「行こう!」という意。

この旅で何回も使うことになるこの言葉を最初に使ったのはこの時だった。

3大ピラミッドとスフィンクスを見て回ったあと、そこから少し離れた小高い砂の丘の上で暇を持て余していたラクダ使いのおっちゃんに教えてもらった言葉。言われた通りに「ヤッラー!」と叫んで馬を蹴り上げてみると、待ってましたと言わんばかりのとんでもないスピードで相棒が駆け出し始めたのだ。おいおいこんなことしていいのか!と思いつつ、気がついたらもう病みつき状態。

 

「ヤッラーー!!!」

 

人気の少ない砂漠を、余った時間でひたすら叫びながら馬で駆け回る。少しでも気を抜いたら振り落とされそうだ。にしてもこの相棒とは、最初に比べて格段に連携を取れるようになって来たなぁ。この時なんかは、多分こいつの出せる最高スピードで走っていた。人間なんかでは到底及ばない速度で突っ走る体の躍動を直に感じれる。目に入る砂埃なんて一切気にならない。と言うより、気にしてられないと言った方が正しい。その瞬間は、笑えるけど、まさに砂漠の風になった気分だった。

うん、これも全部アリのおかげだ。

 

「ヤッラーー!!ヤッラーーー!!!!はっはっはー!!!」

 

 

 

 

 

うし。そろそろ帰りますか。もうここは満足だ。多分、明日からまた世話になります。サハラ砂漠さん。

 

 

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ラクダ使いのおっちゃん。

 

 

衝撃的な初めての砂漠の余韻にどっぷり浸りつつ、フラフラと最初の建物まで戻る。するとアリとその友人たちは、建物前の木陰のテーブルで楽しそうに談笑していた。昼間っから気の知れた男たちでこぞって酒も飲まずに(エジプトはイスラム圏なので、酒は飲まない)みんな楽しそうにゲラゲラ笑ってる。一度砂漠に出てからここに再び帰って来ると、そんな彼らの姿がなんだかとてもグッときてしまった。死の世界と隣り合わせのここは今、人が休息できるほどとても涼しい場所だ。

 

そこに汗だくで帰ってきた俺を見るやいなや、アリが言った。

「はっは!派手に遊んできたみたいだね。最高だったかい?」

もう、ここでなんて答えたかなんて言うまでもない。 

 

とまあ、なんかこっちもこっちで楽しそうだったんで、散々走らせた相棒から降りてから、軽く談笑に加わって話してみた。そしたらその中の一人の若いあんちゃんが、俺をそういう対象として気に入ってくれたらしく、「カワイイ!うちに遊びに来ない?」なんて誘ってきたんだけど、まあこの際、一旦彼の性別を気にせずに考えたとしても、もっと紳士的な誘い方の方がイイんじゃねぇかなと思いながらキッパリ断り続けました!

馬の頭を撫でながら、そのやりとりをハタから見てゲラゲラ笑っていたアリが言った。

 

「アイツは君のことが好きらしいね(笑)まあそれはさておき、階段ピラミッドや他のピラミッドはどうする?」

「ん〜今日はもうギザはいいや。1日中アリに世話になる訳にもいかないし、そろそろカイロに戻ろうよ。」

「そうか。ならカイロに戻ってとりあえずコシャリでも食おう。腹、減ったろ?」

 

ああそっか!エジプトに着いてからノンストップで動いていたから今まで気づかなかったけど、こっち着いてからまだなんも食ってねぇ!もう夕方前じゃんか!

ちゅうことで、とりあえずカイロに戻ってアリおすすめのコシャリ屋へ行くことに。ちなみにコシャリはエジプトのいわゆるソウルフードってやつで、豆と麺と米をちぎって混ぜ、そこにトマトソースをぶっかけた料理。これがまたエスニック料理とはまた違ったスパイシーでガツンと来る辛さ。それでも、およそ17時間ぶりにありついた食事だったので、口にかきこむ右手は止まることを知らなかった。

そこでアリと明日の日程を相談していたら、どうやらアリは学校の教師ながら旅行関係のつながりが多く、詳しくはわからないが昔はそう言ったビジネスもやっていたことがわかった。現在もその名残で知り合った旅行者に格安のツアーを紹介したりしているらしい。(どうりで普通の現地の学校教師とは思えない風貌と堪能な英語なわけだ。)

なんだそういうことなら、明日のツアーは彼に頼んだ方が良さそうだ。向かうは、ここから約400km離れた白砂漠と呼ばれる地帯。そこは、もともと海底だった所が、干ばつで陸に出てきて砂漠となった場所。そこに今もなお残っている、海底時に海流によって削られた岩の大群は、写真で見てもため息が出るような景観だ。そんな異世界にて、テントで一泊できるツアーがある。さっき砂漠を回っていたときに行こうと決めたのだった。

そんなこんなで通常の商人みたいにグイグイしてこないアリとの交渉はスムーズに済んで、すんなり明日の予定が確定したのだった。

ということで、明日の朝6時に宿近くのマックでアリと落ち合うことを約束し、別れる。ああ、旅の初めっからここまで信頼できる人に出会えたことには本当に感謝でしかないな。

 

 

 

 

 

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アリと別れた後はカイロ探索。本の地図を頼りにひたすら歩き続けて、日が暮れる頃に、ナイルにかかる橋から見た夕日。エジプトの太陽は常に大きくて凄まじく眩しい。おまけに空には雲一つないため、こんなのが1日の半分の間地表にカンカンと照りつけてるのだから、そんなの暑いに決まってる。ここで改めて言っておくと、エジプトは初日から最終日にかけてずっとバカみたいに暑かった。

 

 

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現地民しか乗っていない地下鉄。薄暗い車内にて、自分が異物にしか感じないこの感覚、悪くないな。乗車した瞬間は皆んなこっちを見てくるのに、カメラを構えた瞬間にみんなに視線を逸らされた。

 

そして、1日目最後の目的地に到着。

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ここはラムセス駅。まるでファラオたちが残した財宝の中に飛び込んだかのような煌びやかな装飾が特徴で、且つここからエジプトの主要都市のほとんどに移動できるといった、なんともパワフルなスポットだ。明後日に白砂漠から帰ってきて、そのままエジプトの南端にあるアスワンへ向かう乗車券を買うために来たのだけれど、ここの鉄道は現地人を優先的に乗車させるため、カウンターで散々言い合いをした結果、外国人の俺ではチケットを買うことができなかった。ただ、そんなことはとりあえずどうでも良くて、むしろここで一番記憶に残ったのは、周りに居たエジプト人たちが協力してくれて、俺にチケットを買わせようとしてくれたこと。実際にエジプトに行ってみて知ることができた大切な事実のうちの一つとして、エジプト人はとても素直で人懐っこくて優しい人たちだということを最初に切に実感した瞬間だった。結論から言うと、この旅では彼らの優しさに何度も救われた。もちろんそれはお金の話を抜きにした場合に限る。しかし、それが彼らの仕事だから仕方のないことなのだ。

 

 

 

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そしてこれが本日の宿。天井の高いドミトリーの部屋を独り占めしてしまった!

とても長かった1日目も、気がつけばもうずいぶんと夜が深まって来た。

シャワーを浴びて、そのまま砂まみれの服類を洗濯し、明日の荷物をまとめてベッドに深く体を埋める。あっは〜。宿ってこんなに安心するもんだったっけ。

そうして、いつもより少し遠い天井を眺めながら少しの孤独と共に深い眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 (続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

p.s.

とある友人がこのブログを肴に酒を飲んでる、と言ってくれた。

この文字数からして、明らかに見てる側のことを考えたブログではないんだけれど、こればっかりは素直に嬉しかった〜。

ありがとうなー!

 

20歳エジプト紀行3  [カイロ、ギザ 中編] 9月5日②

 

 

昼前のカイロの街をハイスピードでかっ飛ばす銀のセダンは、ある大きな橋の真ん中あたりで路肩に寄せて停車した。

颯爽と車から飛び出して、食いつくように橋の柵にしがみついた俺の目の前に広がったのは、世界最長級の大河川、ナイル川だ。国土の大部分を砂漠が占めるエジプトでは、南北一直線に国を縦断するナイル川の流域に大都市や集落が発生していて、カイロはその北側の下流域にあたる部分に位置している。エジプトという砂漠の国で生きながらえている生命のほとんどがこの川のおかげだろう。

 

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郊外に向けて走っている途中、窓からナイルを見て興奮していた俺を見計らって、アリが橋の上の特等席に車を停めてくれた。しばらくの間カラッと乾いた風に当たりながら悠久の川に身を委ねたあと、太陽の反射でスキンヘッドをピカピカ輝かせているアリに「これずっと見たかったんだー。ありがとう。」と伝え、車に戻る。

 

前回、カイロの街で出会ったアリに「ピラミッドまで連れてこうか?」と誘われた俺は結局、彼の車でカイロから1時間ほどのギザまで行くことにした。なぜアリが会ったばかりの俺にここまでしてくれるのかは、この国で彼と別れる時が来るまでどうせ分からないことだし、俺の目ではどうしても彼が悪い奴には見えなかったのだ。 

 

そんなこんなでナイルに寄り道した後、郊外に出た車は住宅群を貫くフリーウェイをひた走る。エジプトの車道は東南アジア、中東特有の渋滞と交通規制の緩さだが、アリは俺とずーっと会話しながら、力の抜けた運転でスピードの変化なくスイスイと他の車たちを避けていく。そしてカイロを出発して40分ほど経った頃、アリがこう言った。

アリ「お。右斜め前の奥を見てごらん。」

右斜め前。。。いや奥まで建物ぎっしりじゃんか。。。

。。。ん?。。。。おお!そういうことか!

砂埃で霞んではいるが、住宅群の奥に2つの四角錐の頭が確かに見えた。そう。ピラミッドだ。片方の上部にはちゃんと化粧岩が表面を覆っている。でっけえな〜。ってあれ?こんな市街地のすぐ真横にあんのか。。

そして、そこからさらに進むと、地平線いっぱいまで広がる砂漠が姿を現した。地平線とは言え、ここまでの規模で砂が広がっていると、どちらかと言えば肌色の海のように見える。

この時はさすがに、自分がこの身1つでとても遠いところまで来ている実感が込み上げてきた。それは単に物理的な距離の話だけでなく、憧れ続けてきた道のりとか、文化の垣根を踏み越える最初の一歩だとか、たくさんのことを含めての話なんだろう。

そんなことをしみじみと感じながらアリに向かって「俺、人生で初めて砂漠を見るよ。」と呟いたら、アリは口元に笑みを浮かべながら「Welcome to Egypt.(エジプトへようこそ。)」なんて言ってきた。いや〜それは反則だね、オヤブン!

 

 

 

フリーウェイを降りた車は砂漠と市街地の境界に沿った集落地帯のような場所へ入っていく。そこは一見、廃墟化したような建物ばかりだが、よく見るとどの家にも馬小屋やラクダ小屋があり、俺と同い年くらいの若者から小さな子供までもがそれらの世話をしている。彼らのまとう格好が質素であるのを見る限り、おそらくここはピラミッド周辺で展開されているラクダ・馬を使った商売の裏側といったところなんだろう。

その中の一角にある小さな建物でアリの友人と会い、その場で馬を借りた。馬はある程度乗り慣れているので、馬引き抜きでしばし砂漠旅。焦げ茶色の体に長い黒髪をした元気そうな相棒。よろしくな〜。

 

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これが砂漠と市街地の境界に張られた延々と続くバリケード。これの市街地側に沿った道を砂漠に向かう途中、自分と同い年ほどの青年たちが大勢で大きな馬に乗ってものすごいスピードで駆け抜けていく。これがまたとんでもなく力強くて逞しい。このように旅先では、自分の周りのとは全く異なる同世代のライフスタイルに勇気を貰うことが多いなぁ。

さて、この壁を越えるといよいよ砂漠とご対面。行こうかー! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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視界を空の青と砂の色だけが支配する。風は弱く、強い日差しが照りつける。

 

 

 

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砂漠を進んで振り返ったカオスの街、カイロ。あまりに壮観だ。ここでは、砂漠と市街地というあらゆる”流れ”が対極的である両者が隣り合って息づいている。

 

 

 

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一直線でピラミッドには向かわずに、まず遠くから眺めて見ることに。

観光用の正式な入り口から歩きで入ったとしたら、すぐにピラミッドなので、ここまで深く砂漠に立ち入らなかったかもしれない。フリーウェイから見た時とは打って変わって、周囲に比較対象物のない砂漠では遠くから見るピラミッドは遠近感がつかめず、正確な大きさを認識しづらい。

 また、ここまで来て馬の足を止めてみると、周囲の音は風のみに限定される。他の旅行者もいなければ、普段の生活ではなかなか逃れられない機械音はもはや存在しない。物陰もないので、砂漠にいる間は雲ひとつない空から厳しく照りつける日差しを遮ることさえもできない。こうした環境に置かれると、徐々に自分の中の野生的な部分が物を言い出すようようになる。もっと普段の生活でもこういう瞬間が必要なんじゃないかと思った。

 

 

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さて。ピラミッド向かいますか。とりあえず順番にたどっていこう。

 

 

 

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メンカウラー王のピラミッド。三大ピラミッドの中では最も小さい約65メートル。間近で見ると、組み立てのあまりの精巧具合に関心はするものの、もうこの背後にどでかい2基が見えてしまっているので、1番の正直な感想は「小さいな〜」だった。すんません、メンカウラーさん。

 

 

 

 

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カフラー王メンカウラー王の親)のピラミッド。標高約136メートル。頂上付近に創設当時の化粧岩が残っており、地盤が高いため3大ピラミッドで1番大きく見えることから、世間的には1番有名なピラミッドなのではないだろうか。

 

 

 

 

 

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クフ王カフラー王の親)のピラミッド。標高約138.8メートル。平均2.5トンの石たちが約230万個積み上げられている。これは写真では伝わりづらいが、ピラミッド左下にいる見える観光客と比べて見て欲しい。これがまた信じられないほど大きい。ちなみにクフ王の姿は現在とても小さな像でしか確認できず、エジプト考古学博物館に眠っている。

3つとも、砂漠のあまりの広大さに、少し遠目でみると小さく見えてしまいがちだが、触れられるほど近づいてみれば、全くそんなことはなかった。そして何より、ピラミッドを見れたということに感服。ちょっともうこれに尽きるかもしれない。

 

 

 

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ピラミッド内部は暗くて狭くて天井も低いので、写真がこれしか無い(笑)あれだけの数の岩が積まれた内部にどうしてこんな空洞があるのか一瞬不思議でたまらなくなる。

 

ちなみに、この時期がシーズンじゃないことと、近年の旅行者の激減から、ピラミッドにさえほとんど外人観光客がはおらず、いたとしてもエジプト人の国内観光者か、たまーにお気楽な外国人ツアー団体くらい。それゆえに、やはり現地人からすると一人で回るバックパックパッカーが珍しくてたまらないのか、どこを歩いていても、国内観光者に「一緒に写真撮って!」とお願いされることがこっちでは日常茶飯事だ。正直、結構遠くから来てやっと今あのピラミッドにいるんだから、もう少しそっとしておいてくんねえかな〜。と思った。

にしても流石にこのピラミッド内部で頼まれた時は驚いた。どう見ても暗くてインカメの画面に何も写っていなかったからだ。

 

 

 

 

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スフィンクスの入り口。スフィンクスは周りをお堀で囲われており、露出はしているがより近くから見るためにはここから入って、小さな神殿を通らなくてはいけない。その流れで1度本体は見えなくなり、抜けた先の小さな入り口をくぐると、目の前にでっかいスフィンクスがドカーンと現れる。とても迫力のある演出だ。

 

 

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クフ王のピラミッドをバックにスフィンクス。あまりに見惚れすぎて、正面からの写真を撮り忘れてしまった。笑

 

この写真を撮影した直後、そこに居た4人ほどの子供達が話しかけてきた。

男の子「カメラ貸して!写真を撮ってあげるよ!」

ああ〜、なんて無邪気な笑顔なんだろう。

しかし俺は、同じように笑顔で言葉を返してやることができなかった。なぜなら、同じ手口で別の旅行客からバクシーシ*1を得ようとしている彼らを見ていたからだ。

「あ〜。いいよいいよ〜」と素っ気なく断ってしまった。今思えば何か自分のすべきことがあったのかも知れない。

彼らは一見、有名観光地で遊んでいるだけの子供達に見えるのだが、その正体はれっきとした小さな商売人。話に乗って写真を撮ってもらったが最後。その笑顔は一瞬にしてパタリと消え去り、「チップを寄越せ。」としつこくせがんでくる。 もはやそこには、ついさっきまでの無垢純粋な子供の姿はない。

しかしこれも彼らの仕事なのである。今まで、数々の小さな商売人を見て来たが、彼らに対して何をすることが正しいかは、やはりまだわからない。ただ一つわかることは、あまりに早すぎるが、世の中にはどうしようもできない不平等が存在していることを、この年齢にして彼らはもう既に知っているということ。

 

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自分勝手だが、彼らが将来もしここに来た時、そこにいる同じような子供達に対して「ピラミッドはそんな目をして見るもんじゃないぞ〜。」と言ってあげるような大人になってくれることを願いたい。そんなことを言うことができるのは他でもなく未来の彼らしかいないのだから。

 

 

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=番外編=

 

砂漠にて、少しお堅そうなおじさんに写真を頼んで見た。

 

「あ、このアングルで写真撮ってくませんか?」 

 お兄さん「おお、もちろんだ。カメラを貸してみなさい。ほう。これで撮るのか。よーしいくぞー。3.2.1.....」

 

 

 

パシャッ

 

お兄さん「どうだ?うまく撮れているか確認して見てくれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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。。。。。

 

 

 

 

 

これは日本でよくある「あ〜〜ミスったミスった〜〜。インカメだったわ〜〜〜。」とは訳が違う。この表情を見る限り、どう考えてもガチのやつだ。ガチミス。

2人で大笑いしました。

 

 

 

 

 

 

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無理言って、撮り直してもらいました。笑

 


 

 

 

*1:バクシーシ:古くからエジプトに存在する、上の者が下の者にモノを与えるという概念のこと。”モノ”とは言っても、現地人と旅行者の間ではほとんどが現金のことだ。

20歳エジプト紀行2 [1日目 前編]

[カイロ、ギザ編] 

9月5日

 

 

 

地球の影をつくった一本の筋の下に、日の出を待つカイロの街は現れた。

地上には街灯と車のライトによる無数の光の線が網状に広がる。寸分の狂いない原寸大のその地図を見ながら、俺は一体どの道を辿ることになるんだろうなんて想像してみる。

ちなみに着陸直前まで来ても予定はまだ何も決めていない。その時その時、きっと足が勝手に動いてくれる。はず。

 そうして約12時間ほど空を飛び続けたエジプト航空は、一気に飛び上がった12時間前がまるで嘘だったかのように、ゆっくりゆっくり高度を落としていった。

 

 9月5日 朝5時40分  カイロ到着

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機体から降りると、すぐにターミナルへ移動するバスに乗りこむ。座席は運転席以外1つもない。薄暗い車内に詰め込まれ、送迎というより搬送って気分だ。もちろんここでは、送迎より搬送の方がワクワクするから良いんだけど。

 

バスは荒い運転で空港に到着。

さて。まずはビザを発行しなくてはいけない。エジプトでは事前にビザを用意していなくても、空港ですぐに発行することができる。

エスカレーターを上がり、小綺麗な渡り廊下を渡りきると、"観光ビザ"と記された場所を発見した。

厚いガラスで仕切られたカウンター内では、大量の札を1枚1枚数えているインテリ風な従業員と、その奥のデスクでタバコをくわえながら小説サイズの本を読んでいる小太りのおっさん。はは〜早速なんか胡散臭ぇな〜。とりあえず話しかけてみよう。

 

「ビザってここで貰えるんですか?」

インテリ「25ドルだ」

ほほう。ちなみに地球の歩き方には15ドルと書いてある。

「ここには15ドルって書いてあるけど?」

 インテリ「2週間前にエジプトの通貨は暴落したんだ。為替もその本とは変わってるだろう。ほら、払わないなら入国できないぞ。」

ペラペラと札束を数えながら、片手間に会話してくる。てかなんやそのあからさまな嘘は。こんなとこで時間使いたくねえな。まさか空港で大金ぼったくられる訳もなかろう。と思い、仕方なく言われた額をポンとカウンターに出す。

「 わかった。はい、25ドル。」

しかし、インテリは無言でそれを受け取るやいなや、再びさっきの札束を数え始めた。

 

。。。。。

 

。。。ああそういう感じね。

とりあえず聞いてみよう。

 

「あ?で、ビザはどこ?」

インテリ「25ドルだ。」

 

はい予想通り。よくそんな澄まし顔で言えたもんだ。なんとなく、この国でどうやっていけば良いかもだいたい目処が立ってきた。もうこれは大きく出たもん勝ちだ。いち早くエジプトの街に飛び出したいのに、こんなとこでウジウジしてらんない。

よ〜し。まずはひと呼吸おいて...

 

「おい!とっととビザをよこせ!俺はたった今25ドル払ったぞ!早くしろ!!」

 

やべ、やりすぎたか。笑

いやけど、こうでもしないとスムーズに入国できそうもなかったし、こっちも必死だ。

すると、ずーっとだんまり決め込んでた後ろのおっさんが一瞬目を丸くした後、ゲラゲラと大笑いしはじめ、そのままインテリに向かってアラビア語で何か言いはじめた。おそらく内容は、

おっさん「はっは!今回は無理だったな!早くビザを渡してやれよ。」

インテリ「いやぁジャパニーズだぜ?いけるだろうよ普通。」 

といった具合だろう。

インテリは何周数えたかわからない札束を机に投げ、引き出しから小さなビザのステッカーを出すと、さっきとは別人かのようなフランクな態度で丁寧にも俺のパスポートにそれを貼り付けてくれた。

インテリ「そこの二手に分かれてる列の右に並べ。さっきのは、ちょっとおちょくっただけだ。すまなかったな(笑)」

 いやいや、なんだよその変わりよう(笑)俺がもっかい25ドル出したらぶん盗ってただろに。でもほら、もし本の通り15ドルなんだったら、俺はこの時点で既に10ドル騙し盗られてるってことだ。勘弁してくれい!

 

そんな感じでなんやかんや無事入国。荷物受け取りと両替をさっさと済ませた後、個室トイレにてバックパックの何箇所かに現金を分散させ、期待に胸を膨らませながら、少し早歩きで空港の出口へと向かった。

 

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ようやく外へ出れたー。朝っぱらのエジプトの気温はこの時期の日本の日中と同じくらいだが、昼にはここからさらに15度ほど上がるらしい。

 

出口専用ゲート付近にごった返す人々の中を突っ切る。この時はっきりとわかったのは、エジプトでは日本人という民族がすごく珍しいんだなあと言うこと。飛行機を降りてからここに来るまで、かなりの数の視線を感じた。多少過敏に感じ取ってしまっている部分もあるかもしれないが、にしてもマジでめちゃくちゃ見てくる。見張られてるのか、面白がられてるのか、ナメられてるのか、まあなんにせよ地球に訪れたエイリアンになった気分だ。笑

とりあえず市内に出て、宿を探そう。荷物を預けて、早く砂漠を見に行きたい。

そのためにはまず市内までのバスが出ている、ここから約2キロ先のバスターミナルに行かなければならない。この暑さの中、自分がどれだけ歩けるかの確認も兼ねて、歩いてみるか〜。

そうして朝っぱらから大量の車がブンブン飛ばす車道の端っこの、誰一人歩いていないガタガタの狭い歩道を歩いてバスターミナルを目指す。

するとさっそく、車道側から「ヘイ、ジャパニーズ!」とデカイ声が聞こえてきた。こっちは初めて来た見たこともない国をのんびり散歩してる最中なのによ〜。

その後も、50メートル歩くたびに気づいたら隣にタクシー。みたいな感じだったけど、片っ端から断ってようやくバスターミナルへ。

 

しかし、市内へ向かうバスはたった今出発してしまい、次のバスが来るのは1時間半後とのこと。

いやー困った。明らかに歩いていけるような距離じゃない。さてどうしよう。と考えていたところに、たまたま同じ境遇で困っていた日本人旅行者のヨシムネくんに出会った。彼もまた俺と同じ学生バックパッカーだ。目星をつけていた宿がおおよそ同じだったため、彼と割り勘にしてタクシーに乗ることにした。

 

ガタイの良くてテンションの波が激しいおじさんが運転手のタクシーは都会の高速道路を猛スピードで駆け抜ける。乗る前に値段の交渉が成立しているにも関わらず、前を見ないで助手席の俺に、宗教がどうだの政府がどうだのと色んな角度から値段を上げようとしてくる運転手と、後部座席から「頼むから前を見て運転してくれ!」と嘆くヨシムネで車内はてんてこ舞い(笑)

高速道路両脇にはでっかいモスクや、鉄筋コンクリートの躯体に煉瓦の壁をあしらった高層住宅群、大勢のエジプト人歩行者たちによる見たこともない光景の連続。瞬きも惜しいくらいの目新しさに終始「すげえ!すげえ!」と声を上げてしまう。

 

 午前7時30分 指定したタハリール広場に到着。

広場とはいえど、ここは各方面からの高速、地上道路が立体的に絡み合うインターチェンジのような場所。地図は手元にあるものの、カイロは通りが複雑に入り組んでいる上、人や車が大量に流れ、高層ビルがぎゅうぎゅうに林立している街だ。まさにカオスといった具合で最初は右も左も分からない。何とかヨシムネと目印らしきものを探しながら、ここから約1キロほどほど離れた宿に向かって歩き出した。

 

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大通り沿いを歩いていると、ふとこういう小道が現れる。都会とは対照的な静けさの中、穏やかな現地の生活の空気がこっちまでふんわり溢れ出していて、出会うたび目的地を忘れて入ってしまいそうになる。こういうのは旅先での好物の1つだ。

 

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中心街の建物は皆立派。この辺りの車道の横断の難しさは世界的にも有名だ。ただ、嘘みたいな話だけど、高校時代に友達と狂うほどやり込んだスマホアプリの「クロッシーロード」の感覚を頼りに渡り始めると、一瞬でどのルートが最適解か判断できて、こっちで出会う旅行者たちにも驚かれるほどスムーズに渡れた。(笑)(諸説あり)(真似しないでください)

 

ゲストハウス到着。

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目的の宿があるビルの入り口。一瞬心配になるけど部屋は綺麗に保たれている。

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らせん階段で5階まで上がり、目指していた宿に入る。重くて大きい扉を押して入るとそこは、狭くて薄暗いレセプション。奥の方にある半開きのドアの先にはタイルに囲まれた台所があり、そこから陽の光が差し込む。地上から5階離れるだけでとても静かだ。カウンター前のソファに見張り番だと思われる俺と同い年くらいの男性がぐっすり寝ている。起こすのも悪いなーと思ったが、周囲に人が見当たらなかったので、心を鬼にして寝ている彼を起こし、ここに1泊したいと言う旨を伝えた。すると彼は目をこすりながら、ポケットのスマホを出し、ぽちぽち操作して「ん。」と差し出してきた。きっと英語が話せないんだな。とりあえずそれを受け取ると、スマホから超カタコトの日本語が聞こえてきた。

スマホ「コニチワー!オキャクサン、ドシマシタカー!」

電話先の彼はここのオーナーらしい。ここの料金はドミトリーのみで1泊3ドル。共用のトイレ、水道付きで、シャワーはなんとお湯が出るらしい!何よりビル最上階の特権である、地上の喧騒から離れた静けさが気に入った。よし、今日はここで寝よう。

 チェックインの時間まで荷物を預かってもらう事にして、とりあえず街に繰り出す。

 

時間はまだ午前9時ほどだったが、シーシャを吸うなりシャーイ(エジプト人の大好きな甘〜い紅茶)をすするなりして一回落ち着きたい。

なんて思いながら宿周辺のビル間を歩いてると、早くも後ろから声をかけられる。

ああ、また金目当てか。ついさっき到着したばかりの自分の心のガードは、まだどうしても下ろせずにいた。

が、、

実はこの出会いが今回の旅のとても重要な出来事であるのだ。

 今思えば最初の彼の声のかけ方は、とても自然で、他とは違った何というか、すっとこちらの懐に入ってくるような柔らかさがあった。

 

おじさん「どこから来たんだい?」

「日本だよ。」

おじさん「へー。俺は大阪が大好きだよ。今日でこっちは何日目だい?」

「いや、ついさっき着いたばっかだよ」

 

もう先に紹介してしまおう。彼の名前はアリ。少し色白で、レイバンの濃いサングラスに半袖長ズボン、頭はピカピカのスキンヘッドという一見欧米人のような風貌をしている。学校で歴史と数学を教えている教師で、純エジプト人だ。

アリに「この辺で休憩できる場所ないかな?」と聞いたら、シーシャもシャーイもある野外カフェに連れていってくれた。ビルの間に立つ大木の下で心地よい木漏れ日を浴びながら日本からここまでの疲れを癒す。色んな話をしているうちに俺は、人懐っこくて、わざとらしくないアリを少しづつ好きになっていった。ここでのアリとの会話の中でとても印象に残っている言葉がある。

 

「こんな事を地元民のアリに言うのも変な話だけど、4時間前くらいにここに着いたもんだから、誰が嘘を言っていて、誰が本当のことをいってるのか分からないよ。」

アリ「そりゃあそうだ。けど、お前は目で見ることができるだろ?まともに耳で聞いてると痛い目見るから、しっかり目で見て判断するんだ。そうすれこの国が違って見えてくるだろうよ。」

 

確かにそうかもしれない。聞き慣れない言語から全ては汲み取れずとも、相手の目や表情で判断しようとする事はできる。なるほどね。そうして見るか。。。

 

そんな感じで30分ほど休憩し、席を立とうとしたところで、今度はアリからの質問。

 

アリ「ちなみにこの後は何か予定はあるのか?」

「あ〜。タクシーかなんかでピラミットに行こうと思ってるよ。」

アリ「そうか!もし良かったら、俺もそっちの方で用事があるから車で連れてってやるよ。乗馬の経験はあるか?俺の馬を貸してやる。とびきりでかいのをな。」

 

 

。。。いやいやそんなうまい話があるかね。

 

さっそく目で見て判断しろってか。

 

                         

 

続く

 

 

 

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彼がアリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20歳エジプト紀行1 [0.5日目]

 

[出発前〜到着編] 

8月11日、9月3〜5日

 

 

 

8月11日

 出発日から遡ること約1ヶ月弱。

実はこの時はまだ、行き先をエジプト、デンマーク、ネパール、チベットと迷っていた。

エジプト自体に憧れはじめたのは、小さい時に見た映画ハムナプトラシリーズや、父親に買ってもらった青い鳥文庫の「ツタンカーメンの秘密」とかの影響だと思う。あ、あとハガレンの砂漠越えとか。そうやって果てしなく遠いように思えるエジプトの様相の片鱗は実は身近に散らばっていて、俺はそのカケラを拾い集めては目を輝かし続けてきた人間だ。誰しもそうやって憧れの地があるんじゃないかなあ。

そして20歳のこの夏は、ひとりで行ける準備が自分の中で整いつつあるタイミングだった。

そんな感じで昔からずっと行きたい国ではあったけど、それでもほかの国と迷っていた理由は、「こんなご時世に一人でエジプトってもしかして無謀なんじゃねえか」という臆病な自分。

それは、ずっと憧れだったエジプトを目の当たりにするには、自分の目と心がまだまだ若いのではないかという不安と、やはり身の危険に対するもの。

周りの人たちにも「危険だよ!」と、すごい止められた。

 

実際、ハシェプスト女王葬祭殿でのルクソール事件をはじめ、いまだに向こうでは、主要都市にて散発的にテロが起こっている。特に昨今はIS関連のテロ情報は後をたたず、おかげで近年のエジプトの旅行者数は最盛期に比べ大きく激減している。

 

とは言っても、こういう事実と同時に世に流れているネットメディアの情報や人々の話の大半は、どこかの誰かによって肉付けされてしまったものたちばかりで、いざ行ってみると全然そうじゃなかったりする。参考にはできても100パーセント自分の知識としては扱えない。

やっぱ自分の目で確かめるのが一番いい。つーか本当はなんでもそうでありたいよね。かいつまんでるだけじゃ見えてこない部分も見てみたいんだ。

そう思えてからは航空チケットを取るまで一瞬だった。最初からエジプトだったんだなー。

 

 

 

9月3日夜20時

自宅にてパッキング開始。40リッターのリュックに、パスポート、現金、スマホなどの必需品から、土産物のかわいいミニオンのフィギュアまで詰め込む。今回も、決まっている予定は往復の航空機だけ。行き先も泊まる宿もその日に決めて、それから動く。

そんな具合で、現地では移動し続けるので、荷物に関してはたくさん持って行く安心感より、なるべく少なくすることによる身軽さの方が圧倒的に大事だ。

しかも今回の行き先であるエジプトは現在夏真っただ中で平均最高温度がだいたい35―45度、時には50度を超えることもあるらしいから尚更身軽でなくちゃいけない。(普通の旅行者は避けるシーズンらしい。バカ暑かった。)

 まあ、こんな偉そうなことを言ってっけど、出来上がった荷物の少なさには毎回軽く不安になってしまうのよね。笑

 

「あららー。こんなんで大丈夫かー?リュックの容量半分くらい余っちゃってっけど。…まあいいか。」

 

椅子にもたれかかる。

するとこの時、自分の中にジワジワと旅に行く実感が湧きはじめてきたのがわかった。

こんな早くにエジプトに行けるとは思ってもみなかったなあ。自分で行くとは決めたものの、直前になったらやっぱ不安になるもんだな。でもそんくらいじゃなきゃ面白くない。

 

 

9月4日夜19時

成田空港にてトランジット地点である北京行きの機体に搭乗。

カイロまでの往路は、北京のトランジットを含め17時間。格安航空ではお決まりの機材変更による遅延やらで1時間20分待機させられる。トラブルによる長い待ち時間は、どこかの席から赤ちゃんの笑い声が聞こえてきたり、隣の中国人のお姉さんがシートの上に胡坐かいて窓の外を眺めながら桃に丸ごとかじりついていたり。

うわー楽しい。まだ日本なのに、この機体のなかはもう中国です!と言って良いんじゃないかってほど、機内は中国人でいっぱいになっていた。久しぶりの遠くに旅立つ感覚に、ウキウキしてしまう。やっぱいくつになっても、飛行機は興奮するな!

そうやって早くも旅モードでじっと待っていると、なぜかいつの間にか眠りについてしまっていた。

起きた頃には既に機体は高度約9,000mで安定した体勢をとっていて、隣のお姉さんのフライトジョイは桃から赤ワインに変わって代わっていた。

げっ。なんか最近の飛行機の離陸は寝過ごしてばかりでもったいねえな。

 

寝ボケた頭を覚ましながら、とりあえず腕時計とスマホの時計の時刻を北京に合わせ、あらかじめ用意しておいた「地球の歩き方 エジプト編」を開く。どうやら9日の滞在期間では、ナイル川を下ってまたカイロに戻ってくるのが精一杯らしい。(これでも12日かけて回るコース。笑)

まともに睡眠も取れなさそうだなーこりゃ。面白そうだ。ただ帰りの便を逃して、到着日から始まる学校に行けなくなるのはやだなあ。

なんてぼんやりとカイロ到着後のプランを組み立ててみる。それ通りに回れることなんて絶対にないのだけど。

 

すると突然、離陸前まで桃にくらいついていた桃姉さんが「お、尻の青いジャパニーズボーイが起きた!」と言わんばかりのテンションで流暢な英語で話しかけてきた。彼女はずっと窓の外を見つめてたから、社交的では無いないのだろうと踏んでいたが…

何はともあれ、この旅での話し相手第1号だ。

 

中国もいつかちゃんとまわってみたいなあ。

 

 

22時10分北京到着。

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空港綺麗だなー。

久しぶりに訪れた北京空港のセキュリティーチェックの列は、相変わらず大量の乗客でごった返しており、一向に進まない。けど、旅はまだ序盤なので全然楽しい。

 

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搭乗ゲートの窓から見える飛行場の景色はどの国もよく似てる。その中でも管制塔だけは、その国の特色を纏った外観をしていることが多く、ここのは北京オリンピックのときに建てられた北京国家体育場のようなテイスト。(奥のほうにうっすら写ってるんだけど見づらいね。笑)

夜の飛行場は航空灯火を眺めているだけで、これから始まる冒険の前兆のようなもの感じさせてくれるから好きだ。飛行機が飛び交う音に身をゆだねる感覚で、ぼーーっとしてると普段の悩みや考え事が、最初から無かったかのように跡形も無く消えて行く。この辺で日常の自分とは一旦お別れ。

 

 

 

北京時間で00時20分 ようやく待ち焦がれたエジプト航空に搭乗。

 

指定通り、エコノミーの狭い窓側の席に座る。

エジプト航空のフライトでは、出発直前に機内の全画面に煌びやかなモスクの写真が映し出され、放送でコーランが流れる。何を言ってるかは不明だが、聞いていて心地は悪くない。(のちに出会った日本人バックパッカーは、コーランを聞くとISを連想してしまい、気分が悪くなると言ってた。これもリアルな感想だと思う。)

 

コーランが流れ終わるといよいよ離陸体勢。到着したばかりの北京とはもうおさらば。

次来る時はもっとゆっくりしてくぜ!なんて思っていると、出発時間ギリギリに、突然大髭生やした超巨漢のエジプシャンが汗だくで大型旅客機を軽く揺らしながら駆け足で搭乗してきた。

ここで俺は、ふわりと嫌な予感がした。

周りの席で、俺の隣のシートだけが空席のままであることにはずっと前から気づいていた。軽く見回しても周囲はほぼ満席。俺が窓側だから、もしこのままあんな巨漢に隣座られたら左右が壁になるよ!しょうがないけどさ!フライト長いよ!

しかしそんな思いも儚く、ハグリッド(仮名)は窓側に座る俺にニコっと真っ白な歯を見せた後、ドシンと音を立てて俺の隣の席に腰を下ろしたのだった。

「まあそうなるわなー。。。」と思いつつ、明らかな苦笑いを返す。

 

 

00時50分 離陸

機体は真っ暗な北京空港の滑走路を走り抜け、カラダを浮かせた後はいっきにスペースシャトルみたいな角度でグイグイと上昇した。

窓の外の煌びやかな北京の夜景はどんどん遠ざかり、空を覆っていた雲を勢いよく飛びぬける。

するとそこには、まるで待っていたかのように綺麗な星々が姿を現した。

すげーーー!!空が近えーーー!!手ぇ伸ばせば星捕まえられちゃうんじゃないのこれ!!

まあ見事な満天の星空。こういうのだよこういうの。

周りの乗客が窓を閉めて眠りについたり、読書をしている中、一人で窓の外に釘付け状態。独り占めだぜ!笑

 

 (しばらくそれに見惚れたあと、我にかえり恐る恐るふと隣を見てみたら、案の定ハグリッドは爆睡していた。)

(しかも、俺の席の1/4ほどまで侵入した状態で。)

(トイレに行けないね!ん。まあなんとかなるか。)

 

 

 

 

 

9月5日午前4時、カイロ到着に向けて機体が旋回し始めたころ、機体の傾きで目を覚ます。どうやらまた、いつのまにか眠ってしまっていたらしい。姿勢を整え、これまたいつもの癖で窓の外をぼーっと眺める。外は真っ暗。何も見えない。

すると、自分が来た方角の東側の地平線に、ボッと一筋の光が現れた。そして、それは次第にぼんやりと大きく膨らんでいき、やがて包み込むように地球を捉えて、惑星の端っこに影をつくっていった。一瞬、なんじゃこれ?と思ったけど、その正体はすぐにわかった。

あ、なるほど太陽が追い付いてきたのか。

それを眺めていると、寝起きでぼーっとした頭がだんだん澄み渡っていくのがわかった。

涙を流して感動した訳ではないが、初めて宇宙と対面できたようなとても不思議な感覚に陥り、今まで一度も見た事ないような暖かくもありどこか冷たくもあるようなその空の表情にしばらくじっと魅入っていた。

傷だらけの汚い窓からの眺めだったけど、この旅で出会う忘れもしない絶景の1つだ!

 

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さあ、カイロまであと少し!

 

20歳エジプト紀行0 [まえおき]

 

誰に読んでほしいのか、誰に伝えたいのか分からないけど、エジプト滞在記たるものを書いてみることにしました。

 

帰国した直後から「書く」って言ってて、もう5ヶ月近く経ってしまった!

遅くなりました。。

 

 

個人的に書いた日記を公開するくらいなものだけども、ブログというツールで人に見てもらう以上最初に断っておかなきゃいけないことがいくつかあって、

 

・まずこのブログは自分の日々の出来事や思いを綴る場ではなく、すでに終えたエジプト旅行についての記事しかあげません。

 

・おそらく知り合いしか読まないと思うし、ハナからそれくらいのつもりだけど、インターネットに公開する以上、誰が読んでくれるか分からないので旅行時20歳、現21歳の学生であるという事だけ、ここに記しておきます。

 

・あ、そんくらいか

 

 

 

 

 

さて、今回の旅の行き先はエジプト。趣味の一つであるひとり旅。

渡航期間が2017年の9/4~9/15の11日間、現地滞在期間は9日間。

持ち物はバックパック1個で事前に決まっている予定は成田ーカイロ間の往復航空券のみ。

 

現地でのいくつかの事の顛末や感想をつらつらと綴っていきます。

 

ま、あんまり説明しすぎてもしょうがないし、どうなるか分からんけど、とりあえずやってみよう!

 

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P.S.

インスタで「公開されたらトイレでチラ見してね」なんて言うたけど、いざ書いてみたらチラ見で収まるボリュームじゃなかった。。。