20歳エジプト紀行11 [アスワン編] 9月8日 

 

 

 

なんだこの街は。

ナイル川を恵として東川岸側に広がっている街、アスワン。

この旅の第二の都市であるここアスワンは、エジプト内でも5本の指に入る主要都市だ。しかし同じ国であるのに街の様子はカイロとは全く別ものだった。

街は『迷ったらとりあえず川に出れば良い」と言われるほど超シンプル構成。中心地は端から端までたった徒歩30分ほど。高いビルもなく車も渋滞していない。

”混沌の街”カイロとは何もかもが真逆だった。

 

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一方で、アスワンの先住民族である"ヌビア族"と呼ばれる部族の暮らす村が今もなお川の西側に存在している。

 

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(ヌビア博物館より)

彼らはエジプト人とは全く異なり、黒人の血統をルーツに持つ部族だ。

高い誇りを持ち、伝統を維持した生活を営んでいるのが特徴で、今現在では東西でいがみ合うことなく、お互いの生活を尊重しながら共存しており、村には観光者も足を踏み入れることが可能となっている。(ほとんど行かないらしいが。)

 

...と言う前情報だけ知っていたが、実際着いたアスワンからナイル川の向こうに見るヌビア村は明らかに異質な空気を放っていた。距離でいうと700mと離れていないすぐそこなのだが、明らかにそれ以上に遠く見えるし、街の建物の外壁が全て青一色に塗られている様も心の中に得体の知れぬ疑問と興味が生まれるには十分だった。

ましてや一人で向こう岸に行きたいと言うと、同行している2人や現地の人たちにも変わり者扱いを受ける始末。

おっと、これは楽しいことが起こる予兆だ。

待ってろよヌビア族。

 

 

 

ちなみにここアスワンの到着時間15:00時点での気温は41度。

全くをもってアホな気温だ。この暑さはフォローのしようがないほどアホ。日差しが直撃する頭部の中では、黒髪にこもる熱で脳ミソの煮物がいっちょ出来上がりそうだ。

とりあえずそんな灼熱地獄のなか、現在同行中のエイタとリカと一緒に宿をとって、近くのクーラーの効いたお店でコシャリを食べながら作戦会議をすることに。

ああ。クーラー最高。

 

 

エイタとリカは二人とも余裕を持った日程で旅していたが、俺は時間が限られているので、明日の夜にここを出発するために明日だけでアスワンとアブシンベルの主要遺跡を全部回りたいという旨を2人に告げた。

そしたら、2人とも全く嫌がるそぶりを見せず快諾してくれた。ありがたい話だ。さすが旅慣れている。

 

ちなみに2人は長期間日本を離れて中東からアフリカを何カ国か渡り歩いている途中だ。ここエジプトはホテルに泊まってツアーを組んだ旅行には最適だが、ゲストハウスを転々とするバックパッカースタイルで旅をするには比較的難易度が高いとされていて、こっちで会う人たちは様々な経験を持つ高レベルの豪傑ばかりだ。

このレベルの人たちはもちろん”人と旅をすること”に慣れていて、いわば「行き当たりばったりのスペシャリスト」なので、

①お互いストレスを抱えないようにする力

②何かが起こった時の軌道修正力

③ワクワクすることを探す力

の3つに十分すぎるくらい長けている。もしくは元々そういった気質だった人がのめり込んでいくのかもしれない。

実はこれは自由の中で責任を持っていることの証でもある。人のせいにしても何の意味もないことを知っているのだ。

 

そんなこんなで道端で会ったタクシーの運転手に交渉して、明日のドライバーを予約した。この時点で明日は超ハードな1日になることが決定。普通の人が2日に分ける日程を1日に詰め込んだスペシャルツアーだ。

アホな気温の中、アホなスケジュール。集合は朝4時。

いや〜、二人ともいい感じに頭がぶっ飛んでくれていて良かったぁぁあ。

 

 

PM 19:00

日も沈み、完全な暗闇と化したナイル川の方へ出る。

もうこの時点で薄々感じてはいたが、この街はハッキリ言って何もない。けどそれが良い。”都市”であるのにも関わらず、眼前が情報で溢れていないなんてことは、日本ではまず起こりえない。頭のなかが忙しくないのでこれは街の徘徊ではなく、公園の散歩に近いと思う。

真夏の夜風に当たりながら  ナイル川の向こうのライトアップされた謎の山は一体何なのか  を話しながらブラブラ歩く夜もまた旅の妙である。

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(このライトアップされた山でとんでもないことが起こることは、この時はまだ知らない。)

  

しばらく外を探索していると、目の前に何やら大きめのデパートが現れたので、入ってみることに。

中に入ると、時間帯が被っているからか、店員さんの数名がカウンターの後ろや売り場でマットを敷いてサラー(礼拝)を始めていた。1日5回もあるんだから大変なことだ。時間帯的に今は日没後の”マグリブ”だろう。

この時間ばかりは余程のことがない限り店員さんも仕事よりサラー優先だ。

しかしそれだけでなく店内の様子も負けじと異国情緒を漂わせていた。

 

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 #2F奥のアパレルの入り口 #目立ったもん勝ち精神の行く末 #どの角度からでも誰かしらと目が合う恐怖体験 #目の主張が強すぎて服に目がいかない #よく見たら服のジャンルが幅広い #客どころか店員もいない恐怖店舗 

 

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(二人には許可を取っていないので落書きでごまかしました)

#まさかの9D。  #3D、4Dから突然の9。 #意外と面白かった。

 

こんな感じだが、結局思うのは「テキトーさが良い!」ということでした。

 

 

pm 21:00

いい時間になってきたので、ここで一度宿に戻ることに。

しかしどうも消化不良の俺は、夜のスーク(商店街)に出かけることにした。

するとリカも行きたいと言うので二人で出かけることに。(エイタは部屋でスマホをいじりたいとのこと。)

 

 

夜のスークはたくさんの土産物と照明で人もいい具合に賑わっていた。

空を見上げると十六夜の月。最高の締めくくりだ。

いい感じにローカルなシーシャカフェがあったので、そこに入ることに。

 

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さて、席についてマンゴーフレーバーのシーシャとノンアルのビールを2本ずつオーダー。よ〜し、シーシャを吸いながらチルタイム...といくのが理想だった。

しかし、東洋人が夜中に男女でローカルのシーシャカフェに訪れることが余程珍しいのか、満席の店内のおじさん達全員がこちらをジーッとガン見してくる。

その見方も人さまざまで、黙って見てくる人もいれば、友達とニヤニヤしながら見てくる人もいるし、まあ正直かなり居心地の悪い空間だ。笑

しかし、その視線のほとんどを集めているはずのリカ本人を見ると、全く気にしてなさそうにスパスパとシーシャを吸っているので、まあほっときゃ良いか。

 

さすが関西人なだけあって話し上手なリカは、しょうもない話から、日本にいた時の自分の悩み、なぜこの旅に来たかを赤裸々に話してくれた。

あまり簡単に他人との壁を壊せない俺も、気がついたら自分のことをたくさん聞いてもらっていて、席を立つ頃には月の位置もずいぶんと変わっていた。

 

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am 00:30

シャワーを浴び、洗濯と明日の準備を済ませる。やはり宿は安心する。

いやはや。今日も大変長い1日だった。

不眠に陥った夜行列車で15時間かけて訪れたアスワン最初の夜。

さすがにベッドに飛び込んだ瞬間、自分がいかに疲労しているかがわかった。

さすがに今晩はしっかり寝なくては。

 

 

 

 

 

 

さて、明日は4時集合だから3時半起きくらいか。

 

おい。3時間後じゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

(続く)