20歳エジプト紀行10 [特急列車 編] 9月8日
9/8 AM11:30 深夜特急
窓から遠慮なく降り注ぐサハラの燦々と降り注ぐ陽光を顔面に直に食らって目を覚さない人間など、きっと存在しない。
目を開けたら閃光弾一発。
斬新な目覚めだぜサハラさん...!!!
結局昨晩はうまく寝付けず連結部分に行ってタバコを吸っては席に戻って、「さあ寝よう!」と試みるも、気持ちが浮ついて眠りにつけない。そして結局、何も見えない窓を見つめる、の繰り返し。
おそらく就寝したのは夜が明け始めた5時過ぎ頃だった。
しかしそんな孤独の夜が嘘だったように窓の外は真っ白に明るかった。
まあ〜飽きないわ、この景色!
”人が炎をずっと見つめていられるのは同じ形になることがないから”
などとよく言われているが、砂漠も同じだろう。
砂しかないのに同じ表情は見せない。
さすがですよサハラさん。
こんな景色から急にポッと生活が現れたりする。
不思議でしかない。
ナイル川が流れているとはいえ、こんな砂漠のど真ん中で生き延びていられることとか、どうしてここを選んだのか。はたまた選べなかったのか。
到着予定時刻までまだ時間があるので暇つぶしに連結に赴く。
するとそこは、すっかり昨晩の危険な空気とは打って変わって、そっと日差しがさしこむ優しい空間に生まれ変わっていた。
落ち着く。
時間帯は昼前だが、そもそも時間という概念すら存在していないような穏やかな空気で満ちていた。
一定の速度で流れ行く景色も、抑揚や展開の少ない心地よい音楽のように、俺の意識を尊重してくれているように思える。
スーーーッ、ハーーーーー...
スーーーッ、ハーーーーー...
すると突然、反対のドアでタバコを吸っていたおっちゃんが話しかけてきた。なんだよ気持ちよく深呼吸してんのに。
「おい君!このドアね、開くよ?」
...え、まじ?
早速ドアをブチ開けて半身を少し風に委ねてみた。
とたんに列車連結部分に満ちていた空気はドアから溢れ出るように逃げてゆき、走行スピードと同速度の突風が俺の前髪を吹き飛ばす。
うわ。外だ。
走ってる電車から身を乗り出したことなど今まで一度もなかったから、心臓がなんかもうバクバクいっている。
これでもう昨晩の暗闇とも負い目なく仲直り。
ああ、生きてるな。
PM 14:30 アスワン到着
電車から降りて、エイタとリカと14時間ぶりに合流。ちなみに2人はめちゃくちゃ寝れたらしい。
さて、ここは気温は摂氏41度。
日焼けで火傷を負うこともある。
この時点で、なんとなく「ああ、こっからはしばらく休みなしの苛酷な闘いになるな」という予感がした。
しかしこの後、そんな予感を遥かに超える地獄と楽園を旅することになる。
(つづく)
p.s.
2年前になってしまったけど、旅の記録を書きつづけることに意味を見出せるようになってきた。
恥ずかしい話ですが、20歳の自分に少し救われております。
ここまで読んでくれている冒険好きのあなた、いつもありがとう!